入塾ゼロ。ポスティングしても誰も来ない日々
学習塾を始めたばかりの頃。
チラシを作り、毎日のようにポスティング。
SNSもブログも試してみたけど、まったく反応がない。
教室の電気をつけて、誰も来ない机の前でただ座っている日が続いた。
「このままで本当に大丈夫か?」
心の中では焦りと不安が渦巻いていた。
誰にも相談できず、何も手応えがないまま、時間だけが過ぎていく感覚。
“起業って、こんなに孤独なんだ”と痛感した日々だった。
少しずつ届き始めた“想い”と初めての入塾
ある日、ポスティング中に一軒のおばあちゃんに声をかけられた。
「これ、あなたがやってるの?頑張ってるねぇ。」
たった一言。でも、その一言が、涙が出るほど嬉しかった。
“ちゃんと届いてる人もいる”──そう思えた瞬間だった。
そこから、少しずつ問い合わせが入るようになった。
初めての面談。初めての入塾。
「先生、よろしくお願いします。」
その言葉を聞いたとき、全身に電気が走ったような感覚があった。
ようやく、“ゼロ”が“イチ”になった瞬間だった。
生徒が増える喜びと、時間が削られる現実
それからは、口コミで少しずつ生徒が増え始めた。
嬉しかった。信じてもらえることが、こんなにも励みになるんだと思った。
でも同時に、授業の準備、保護者対応、チラシ制作、経理、掃除…。
全部一人でやっているうちに、どんどん時間が削られていった。
夜中に翌日の準備をし、朝方に寝る。
食事もコンビニ、会話もなく、ただ“こなす”日々。
手元にはお金が少しずつ残るようになったけど、心は削れていった。
身体と心が限界を迎えかけたとき
ある日、ふと鏡に映った自分を見て思った。
「誰だこれ?」
顔色は悪く、目の下にクマ、背中は丸まっていた。
身体が重く、言葉が出てこない日もあった。
小さなことでイライラして、周囲に当たってしまいそうになる。
“このままじゃ、いつか潰れる”
自分でもそう思った。
でも、止まれなかった。止まったら、すべてが崩れる気がしていた。
家族の存在が、僕を支えてくれた
そんな時、ふと目に入った子どもたちの笑顔。
家に帰ると「おかえりー!」と飛びついてくる小さな体。
何気ない会話、たわいもない笑い。
妻が黙って出してくれるご飯。子どもが描いた「せんせいだいすき」の手紙。
心の奥が、じんわりと温かくなるのがわかった。
「大丈夫、あなたはあなたのペースでやればいいよ」
妻が言ってくれたその一言で、どれだけ救われたかわからない。
それから、少しずつ「やらなきゃ」ではなく「やりたいからやる」に気持ちが変わっていった。
いま、伝えたいこと
起業や個人経営は、自由と引き換えに“孤独”や“責任”がついてくる。
夢を追いかけるって、カッコいいことばかりじゃない。
むしろ、地味で泥臭くて、不安定で苦しいことの方が多い。
でも、それでも続けてこれたのは──
“支えてくれる存在”がそばにいてくれたから。
家族。仲間。生徒。保護者。
一人で始めた塾だけど、いまではたくさんの「応援」で成り立っていると実感している。
だから、今、もし誰かが苦しんでいたら言いたい。
「一人で頑張らなくていい」
誰かの力を借りることは、弱さじゃなくて強さ。
そんな当たり前のことに、僕はようやく気づけた。
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